
印刷には版を必要とするものと版が不要なものがあり、そのうち版を必要とする印刷は有版印刷(ゆうはんいんさつ)と呼ばれています。
今回は知っているようで知らない方も多く、知れば知るほど奥深い版についてご紹介いたします。
版とは
版とは印刷工程において画像や文字を印刷物に転写するためのものを指します。
後述の通り、版は印刷方法によって形状が異なります。
また、版やその元となるフィルム原版を製作する一連のプロセスを製版と呼びます。
製版は印刷物の品質を左右する重要な工程であり、印刷する内容に合わせた版を選定、製版することで不良の少ない優れた印刷物を製作できます。
版の種類
印刷の仕組みの都合上、版を必要とする印刷を有版印刷と呼びます。
有版印刷は凸版印刷・凹版印刷・平版印刷・孔版印刷を指します。当社で使用しているシルクスクリーン印刷やシール印刷も有版印刷です。
凸版印刷(レタープレス・フレキソ印刷)
印刷する箇所が盛り上がっている版を使用します。版の盛り上がった箇所にインクを付着させ、素材に押し付けることで印刷します。はんこと同じ原理ですので、印刷の仕組みが想像しやすいかもしれません。
凹版印刷(グラビア印刷)
印刷する箇所がくぼんでいる版を使用します。版のくぼみにインクを溜めて印刷します。
平版印刷(オフセット印刷)
凹凸のない平らな版を使用します。水とインク(油)が反発しあう原理を利用し印刷します。
孔版印刷(シルクスクリーン印刷)
メッシュ(紗)で構成された版を使用します。印刷部分だけインクが通るように加工されており版の上からインクを押し出すことで印刷します。
次項では当社の製品で採用されることが多い、シルクスクリーン印刷方式の版について詳しく紹介いたします。
当社におけるシルクスクリーン製版の工程

※当社のお問い合わせからご納品までの流れ
当社では④にてデザインデータが完成し校正を経たあと、⑤製品製作の工程着手前に製版を行います。
参考記事
シルクスクリーン版のトラブル
版は印刷の要であり、版に不備があると製品自体の不良に発展することもあります。
版のトラブルとしてはたとえばピンホールと呼ばれる文字や図の欠け、モアレ(モワレ)や印刷方法ごとの再現性などがあげられるでしょう。
明らかな版の不良は別として、モアレや再現性の問題は版の工夫で避けることができます。
シルクスクリーン製版の工夫一例
メッシュ数
メッシュ数は紗(メッシュ)の目の細かさを指し、版の1インチあたりの糸の数を指します。メッシュ数が大きいほど目が細かく繊細な表現が可能ですが、インクが通りづらく目詰まりが発生する可能性があります。印刷したい内容やインクに合わせてメッシュ数を適切に選定することで細かいデザインも印刷できます。一方メッシュ数が少ない場合、インクの通りは良くなりますが、穴が大きくしっかりと印刷されるため、細かいデザインの再現が難しくなります。
バイアス角度
バイアス角度とは、スクリーン版の枠に対してメッシュの糸がどのような角度で張られているかを指します。枠に対して縦横直角に糸を張るノーマルと、角度をつけて糸を張るバイアスの2種あります。印刷内容や印刷物に応じて適切なバイアス角度を設定することで、インクの流れを最適化し、再現度の高い印刷を実現しています。バイアス角度が適切でない場合、図柄の精度が低く表現されてしまうことや、布地への印刷の場合モアレの原因になることもあります。
まとめ
製版は印刷工程において非常に重要なステップです。
印刷会社でないと馴染みの薄い版ですが、有版印刷をご注文の際は必ず必要になる初期投資でもあります。このブログが、製版についての理解を深める一助となれば幸いです。